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大津地方裁判所 昭和59年(わ)442号 判決

本店の所在地

大津市大江二丁目三三番三号

法人の名称

株式会社 内田組

代表者の住居

大津市大江三丁目二七番一五号

代表者の氏名

内田マサエ

本籍

大津市大江三丁目四五六番地の一

住居

大津市大江三丁目二七番一五号

会社員

内田美千男

昭和三二年二月四日生

右両名の者に対する法人税法違反、内田美千男に対する公務執行妨害各被告事件につき、当裁判所は検察官大塚清明出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社株式会社内田組を罰金八〇〇万円に、被告人内田美千男を懲役一年六月に処する。

被告人内田美千男に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人株式会社内田組は、大津市大江二丁目三三番三号において建設業を営むもの、被告人内田美千男は、同会社の保安出納係としてその経理等を掌理しているものであるが、被告人内田美千男は、被告人株式会社内田組の右業務に関し、法人税を免れようと企て

一、昭和五六年三月二一日から同五七年三月二〇日までの事業年度における実際の所得金額は四、八八一万〇、五三〇円で、これに対する法人税額は一、九五四万〇、二〇〇円であるにもかかわらず、架空の外注費を計上し、よって得た資金を仮名の定期預金とする等の手段により、右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五七年五月一七日、同市中央四丁目六番五五号所在の大津税務署において、同税務署長に対し、同年度分の所得金額が一、六三七万三、八三四円で、これに対する法人税額が、五九一万六、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年度分の法人税一、三六二万三、六〇〇円を免れ

二、昭和五七年三月二一日から同五八年三月二〇日までの事業年度における実際の所得金額は四、四二六万〇、五七〇円で、これに対する法人税額は一、七六二万九、二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の手段により、右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五八年五月一八日、前記大津税務署において、同税務署長に対し、同年度分の所得金額が一三一万七、六七二円で、これに対する法人税額が三九万五、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年度分の法人税一、七二三万四、一〇〇円を免れ

第二  被告人内田美千男は、昭和五九年一一月七日午前一〇時ころから、大津市京町三丁目一番一号大津地方法務合同庁舎四階大津地方検察庁五号室において、株式会社内田組に係る法人税法違反被疑事件の被疑者として同検察官検事石田昌司(当三八歳)の取調べを受けていたが、同日午前一一時五分ころ、同所において、やにわに、「内田組をつぶすんか、つぶせるものならつぶしてみい。」と怒号しながら、机上の辞書六法全書等三冊を同検事の胸部及び腹部に投げ付けて暴行を加え、引き続き、机上の辞書一冊を同検事目掛けて投げ付けようとしたため、同検事の取調べの補助をしていた同検察庁検察事務官山元富雅(当三二歳)がこれを制止しようとしたところ、更に激こうし、同所において、同事務官に対し、その胸部を手で突き、顔面等を手拳で殴打したうえ、背部等を鉄パイプ製椅子で殴打し、同事務官が同所から逃れるや、これを追いかけ、同室出入口付近廊下において、その着用していたワイシャツの胸倉をつかんで、ボタンを引きちぎる等の暴行を加え、もって右石田検事及び山元事務官の公務の執行を妨害し

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人内田美千男の当公判廷における供述

判示冒頭事実につき

一  登記官作成の登記簿謄本(検乙一号)

判示第一の一及び二の各事実につき

一  被告人内田美千男の検察官に対する供述調書三通(検乙一六号、一七号、一九号)

一  被告人内田美千男の大蔵事務官に対する供述調書五通(検乙八ないし一一号、一四号)

一  内田種夫の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書

一  内田マサエの大蔵事務官に対する供述調書

一  伊藤正夫の大蔵事務官に対する供述調書二通

一  沢田さざ江の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書

一  西川傳一の検察官及び大蔵事務官(二通)に対する各供述調書

一  林孝三の大蔵事務官に対する供述調書二通

一  森国清の大蔵事務官に対する供述調書(検甲二四号)

一  西川進の大蔵事務官に対する供述調書

一  駒井宏好の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書

一  検察官作成の報告書四通(検甲六号、五四号、六三号、六四号)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書八通(検甲七号、二七号、二八号、三二号、四二号、四四号、四六号、六〇号)及び青色申告の承認申請書

一  長谷川邦男、駒井宏好作成の確認書

一  西和子作成の回答書

判示第一の一の事実につき

一  被告人の検察官(検乙一八号)及び大蔵事務官(検乙一二号、一三号)に対する各供述調書

一  森国清の大蔵事務官に対する供述調書(検甲二五号)

一  新庄護の大蔵事務官に対する供述調書

一  検察官作成の報告書五通(検甲四八号、五一号、五三号、五五号、五六号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲一号)及び法人税確定申告書の謄本(検甲三号)

一  大蔵事務官作成の領置てん末書

一  林道彦、脇坂宏、二橋百合子、高畑修、坂口昭義各作成の確認書

一  押収してある総勘定元帳(株式会社内田組の第一二期分)一冊(昭和六〇年押第五号の一)

判示第一の二の事実につき

一  沢田博の大蔵事務官に対する供述調書

一  内田典子の大蔵事務官に対する供述調書

一  検察官作成の報告書二通(検甲五八号、五九号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲二号)及び法人税確定申告書謄本(検甲四号)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(検甲四三号)及び差押てん末書

一  沢田博、澤田実各作成の供述書

一  坂口正彦、古川修、深尾俊彦、柴原恵子各作成の確認書

一  押収してある総勘定元帳(株式会社内田組の第一三期分)一冊(前同押号の二)

判示第二の事実につき

一  被告人内田美千男の検察官に対する供述調書四通(検乙二〇ないし二三号)

一  検察官作成の実況見分調書及び捜査報告書八通(検甲六六ないし七一号、七四号、七五号)

一  石田昌司、山元富雅各作成の上申書

(法令の適用)

被告人両名の判示第一の一及び二の各所為は法人税法一五九条一項(被告会社につき同法一六四条一項)に、被告人内田美千男の判示第二の所為は刑法九五条一項に各該当するので、被告人内田美千男につき各所定刑中懲役刑を選択し、被告人内田美千男の判示第一の一及び二並びに第二の各罪、被告会社の判示第一の一及び二の各罪はいずれも同法四五条前段の併合罪であるから、被告人内田美千男については同法四七条本文、一〇条により判示第一の二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人内田美千男を懲役一年六月に、被告会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金八〇〇万円に各処し、被告人内田美千男に対し、情状により同法二一条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 山田賢)

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